2014年03月26日

「孤独で寂しい」と「人に迷惑をかけずに一人でいたい」、混在する思い

何か理由をつけて施設に行くことを嫌がっていた
一人暮らしの女性。
長男が転勤でご自宅を出てから、ずっと一人で暮らしていました。
ケアマネジャーは、日に日に元気がなくなっていくご本人の様子を見て、ふるさとの利用を提案しました。
ご本人は了承してくださいましたが、
いざ送迎のお迎えに伺うと「頭が痛いから」という理由で、施設に行くことを嫌がりました。
スタッフはご本人のお気持ちを尊重して引き返すことになり、車に乗り込んだ際、
窓からとても悲しげにふるさとの車を見つめるご本人のお姿に、後ろ髪引かれる思いでご自宅を後にしました。

「人に迷惑をかけたくない」というお気持ちがブレーキをかけていた
それから1週間後、ご自宅を訪問させていただくと、
ご本人はスタッフの顔をご覧になった瞬間、とても安心したお顔をしていらっしゃいました。
スタッフは施設にお越しいただけるようにご案内しましたが、
「目まいがしてフラフラするから行きません」と、今回も断られてしまいました。
しかし、そんなお言葉とは裏腹にご本人の目がとても寂しそうだったので、
スタッフはすぐに施設に戻ることはせず、ご本人のお話を伺ってみると、2つの相反する思いがあること気づきました。
「一人で暮らしていることに孤独を感じているけれど、人に迷惑をかけたくないから一人でいたい」
というお気持ちを抱えていらっしゃったのです。

「行かない!」から「そういえば今日だったわね」と、少しずつ心境の変化が見られた
「先日ご子息からお電話をいただきまして、お母さんにたまにはゆっくりしてきて欲しいとおっしゃっていました」と、
ご本人にお伝えすると、途端に笑顔が溢れて「そうなの?」と安心され、ふるさとの車に乗ってくださいました。
ところが施設の前に車が到着した際、
「家を空けてきてしまったわ!私帰らなきゃ!」と、再びご本人の心の葛藤が起こりました。
施設の中に入ってからも、落ち着かないご様子でしたが、
1人のスタッフがずっと横について、ご本人の本心をお話しいただけるように努めました。
この日の帰り、スタッフ同士で話し合いをし、ご本人が安心してお越しいただくために、
ふるさとにいらっしゃることを習慣にしていただく必要があると考え、ケアマネジャーに相談しました。
そして、週4回ご利用いただく曜日を固定することが決まり、
1ヶ月ほど経った頃には少しずつお気持ちの変化が見られるようになりました。
スタッフが朝の送迎で訪問した際に嫌がる様子はほとんどなくなり、「あら、そういえば今日だったわね。」と、
ふるさとで過ごしていただく時間が生活の一部となってくださったようです。

「いつも迎えに来てくれてありがとう」
ご本人はスタッフに心を開いてくださり、本心を打ち明けていただくことが増えていきました。
ご自身の物忘れの症状が進行していることを自覚していらっしゃり、
「周囲に迷惑をかけていることが耐えられず、この世から消えてしまいたい!」と、
ずっと辛い思いを抱えていらっしゃったのです。
そして、「こうして、いつも迎えに来てくれて、ふるさとにいられることが本当に幸せ」と、涙を流されます。
その涙が悲しみから来るものではなく、嬉しさから来るものであると感じ、
私たちスタッフは、ご本人のお心が癒やされてお気持ちが楽になるお手伝いをさせていただけたことを、
心から誇りに思い、嬉しい気持ちでいっぱいになりました。

認知症対応型通所介護施設 デイサービスふるさと 川崎市内