2016年03月02日

不可解な行動でも否定しない 静かなコミュニケーション

認知症対応のデイサービスでも症状に対応できなかった
奥様と二人暮らしの男性。
数年前から、物の名前や言葉が出てこなくなりはじめ、
それまでのようにお話しになることができなくなっていたそうです。
認知症と診断されたことをきっかけに、近隣のデイサービスをご利用に。
しかし帰宅願望が強く、コミュニケーションが難しいことから、施設ではご対応できなかったそう。
認知症対応のデイサービスでも同様で、すぐご帰宅になってしまい…。
ケアマネジャーから認知症の方専門のふるさとを紹介された時、
奥様は、「受け入れてもらえるところがあって、良かった…」とホッとしたそうです。

突然席を立ったり大きな声を出したり…
はじめの数回は、ご本人様は席を離れることが多く、室内を走り出したり、
突然、周囲の方が驚かれるような大声を出されることが頻繁にありました。
「ねぇ! あれ、あれ!」と大きな声でおっしゃっていたので、
何を指していらっしゃるのかと視線を追ってみると、
ご本人様は施設の外を走る車をご覧になっていました。
一台一台ご覧になっていらっしゃり、車に大変ご興味があるようでしたので、
スタッフは玄関からすぐの駐車場へご本人様をご案内してみることにしました。
すると、ご本人様は送迎車の周りをグルグルと周りながら、触ったり、中をご覧になったりされました。
車の他にも、施設の様々な物にご関心があり、
突然席を立ち、ファイルケースなどを触ったりすることを、日に何度も繰り返していらっしゃいました。

ご興味からの行動 スタッフは静かに見守り対応
ご興味やご関心からの行動ですので、スタッフは止めたりせずに見守らせていただきました。
また、必要以上にお話しかけたりしませんでした。
これは、言葉でのコミュニケーションが難しくなってこられているため、
どんなに丁寧な言葉でお話しかけたとしても、
ご本人様は、『否定された』とお感じになるかも知れない、と思ったからでした。
ただ笑顔でいることを心がけ、常に傍にいるように。
ご本人様が歩かれる時は、そっと後ろを付いて行くようにしました。
1ヶ月ほど経つと、ご本人様は席を立つ前に、スタッフへ目で合図をくださるようになりました。
そこで、「歩きますか?」とスタッフがお話しかけると、ご本人様は「うん」と頷いて、お立ちに。
スタッフが後ろを付いて行くことを快く思い、それを求めてくださっているようでした。
同時に、大きな声を出したりすることは全くなくなりました。
さらに、ポケットからティッシュを出し、皆に配ってくださるなど、
ご本人様なりの行動で、スタッフや他の方とコミュニケーションをとろうとしてくださるようになりました。

ご自宅で落ち着いていることが増え、とても穏やかに
それからも、何度も席を立ち、施設内を歩いたり、窓から外を眺めたりされ、
あまりお座りになることなくお過ごしになっているのですが、
奥様のお話によると、ご利用されるようになってから、夜ぐっすりと眠るようになったそうです。
また、これまではどこかソワソワとしているような様子がご自宅であったそうですが、
落ち着いていらっしゃることが、とても増えたとのことです。
ご本人様が非常に穏やかになったと、奥様とケアマネジャーは喜んでくださっており、
現在は週に3~4回、介護保険いっぱいまでご利用いただいております。

認知症対応型通所介護施設 デイサービスふるさと 横浜市内